優しさに包まれて

『モテることは否定しないよ。でも、好きな女には相手にされてないな。』

翔は、そう言って由華の髪に触れた。

『えっ？』

『誘ってもうまく逃げられる。今まで何度、振られたかな。数えきれないよな。なぁ、浅菜…。』

『えっ？私ですか？』

『まさか、気づいてなかった訳じゃないだろ？』

『あのっ…でも、課長は総務部の藤原さんと付き合ってるって聞いてたから。私…勘違いしちゃいけないって…部下だから誘ってもらってるんだって、そう思うようにしてて…。』

『藤原ねぇ。あれ、俺の実の妹。結婚してるから、大塚じゃなくて藤原。』

『妹…？結婚…？』

混乱している由華は、翔が何を言ってるか、わからなかった。

『そ。妹だよ。だから一緒に帰ることもある。まぁ、知らない人が見たら、付き合ってるって思われても、おかしくないかもな。』

由華は翔の言葉に頷くことしかできないでいた。