優しさに包まれて
向井くんと、仕事の話をしながら、1時間ほど飲んでいると向井くんが突然、テーブルの下の私の手を、ぎゅっと握りしめてきた。
突然のことにビックリして、手を振りほどこうとしたが、強く握りしめられていて、振りほどけない。
私が座っていた場所が部屋の隅の方だったせいか、まわりに気づいてもらえなかった。
打ち上げだし、雰囲気を壊さないようにと、やんわりと向井くんに手を離して欲しいと伝えてみたけど、酔っているせいか、全く離してくれる気配がない。
目がトロンとして、さっきから同じ話ばかりしているから、結構、酔っているみたい。
小さくため息をつきながら時計を見ると、21時30分。
20時から2時間で予約してるから、あと30分くらいで終わるはず。
それまで我慢しようと思って向井くんの話を聞いていると、パッと向井くんの手が離れた。
やっと解放されたと思い顔を上げると、向井くんが、真剣な顔で私を見ていた。