優しさに包まれて

伝えたい気持ち

その頃、翔と由華は由華のマンションの近くにあるバーで飲んでいた。

『課長は阿部部長の気持ち、いつから知ってたんですか。』

『俺もお前と同じ頃だな。あんなに女をとっかえひっかえしてた公人が急におとなしくなったんだよ。で、聞いてみたら、気になる女がいるなんて言うし。でも、その女には彼氏がいるから、声をかけることもできないっていうんだよ。』

『そうだったんですね。』

『うん。俺も気になってさ、小見山のこと周りの奴に聞いたらさ、振られたって奴が何人もいてね。しかも、彼氏がいるからって理由だっていうしさ。今は部長だけど当時、課長だった総務部の八木も振られたって聞いてさ。八木だよ。あんないい男でも振られるんだよ。公人の方がいい男だけど、さすがに、当たって砕けろとは言えなかったよね。公人の行動を見て本気だってわかってたからさ。』

『でも、あのリングは?』

『あれな。あれがなければ、もっと早く上手く行ったんだろうけどね。あれは、女よけだったんだよ。公人は、あの容姿だから、学生の時からモテてたしね。ただ、あいつは自分から本気で女に惚れたことがなかったから、本気で惚れた女と付き合いたいからって言って、彼女を作らなかったんだよね。だから関係を持った女に、本気にならないでくれっていう合図だったんだよ。あのリングが。あれのおかげて、本気であいつに告白する女はいなくなったし。まぁ、それでもいいと思う女が寄ってきてたけど、適当に遊ぶにはちょうど良かったんじゃないか?』

『色々大変なんですね。モテる人は。課長も大変でしょ?』



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