飼い猫と、番犬。【完結】
賑やかな朝餉が終わると、次は市中の見廻りが待っていた。
私達の京での主な役目は狼藉(ロウゼキ)者の取り締まり。
昼と夜の二回、数人の隊士に分かれて町を見て廻るのだ。
けれど土地柄なのか何なのか、余所者である私達を見る人々の視線は冷たい。あからさまに避けられることもあれば、笑顔でのらりくらりと質問をかわされたり。
まぁ芹沢さん達が怒りに任せ店に火をつけたり金子を巻き上げたりとやりたい放題だった影響も色濃くあるのでしょうが。
しかし京都守護職お預かりとなった今、もう他の浪士と同じなんて言わせません。
あの芹沢さん達ももういない。
地道にやっていればそのうち町の方も少しずつわかってくれるでしょう。
それまで私達は只々頑張るのみです。
「沖田助勤、お出掛けですか?」
隊務を終え、夕餉までの合間を狙って一人屯所を出ようと草履を履いていると、たまたま通りかかった隊士が声をかけてきた。
まだうちが壬生浪士組だった頃に入ったこの山野の言う男も、男子らしからぬ整った顔のよく笑う青年だった。
「ええ、湯屋に」
付き合いも少しばかり長くなってきて、何となくあった親近感故に、何も考えず答えたのがいけなかったらしい。
「あ、じゃあ俺も一緒して良いですか?すぐ用意してきますから」
「あっ!!」
パッと顔を輝かせてくるりと方向転換したその人の背に、無駄に大きな声をかけることになってしまった。