飼い猫と、番犬。【完結】



それから二つの店を回らされることになったのだけれど。


買う物は見たこともない草木の根っこなどの薬種ばかり。


一応、医者の真似事のようなことも出来るとは聞いていたけれど、どうやら本当だったらしい。


慣れた様子でそれらを選んでいくそいつは少しだけまともに見える。


……少しだけですけどね。


というか私にはどれも石田散薬に使ってるあれと同じようにしか見えないんですけど……。


風呂敷に包まれていく乾いた根っこを見つめながら、ふと一人土方さん家秘伝の妙薬を思い出した。



三つの店でちょこちょこと買ったそれらの薬種は、流石に合わせれば少々嵩ばりはするものの、幸いあまり重くない。


聞けば土方さんに頼まれて薬を作ることになったとか。


それならまぁ隊務みたいなものだし、手伝ってやっても良いかななんて思う。





「あっつぅー」



最後の店をあとにしてすぐ、パタパタと着流しの衿で己を扇く山崎がだるそうに声を伸ばした。


「そんな恰好してるからですよ」

「そんなん色だけやろ。袴も履いてへんし、さらしも巻いてへんさかい自分よりましや思うけど。ちゅうか自分こそ乳蒸れへんの?ソレ」

「ちょ、往来で変なこと言わないでくださいよっ!」
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