飼い猫と、番犬。【完結】
昔馴染みばかりが揃う夕餉の席も、何となく話しかけられずに口数少なで食べ終えた。
西の空が薄紫に染まっても、じめじめとした蒸し暑さは消えなくて、首筋に髪が張り付く。
障子の向こうはもう薄暗くて、そういえば一くんは夜の巡察だったっけと思い出した。
灯りをつけ、隅にあった布団を広げると、上に腰掛け髪をほどく。湯屋から戻って暫く経つけれど、中の毛だけがまだほんのりと湿っていた。
わしわしと空気を含ませ櫛を入れたところで、やっと平助が部屋へと戻ってきた。
「……あ、お疲れ様」
「……うん」
漸く交わせた言葉はどこかぎこちない。
朝は普通だった。とすれば理由はやっぱり昼間のあれしかない。
「……その、昼間のは別に遊んでた訳じゃないんですよ?あいつが土方さんに頼まれた薬を作るのに薬種問屋に行くって言って、無理矢理付き合わされてですね……」
あー我ながら言い訳っぽい。
まるで恋仲にかけられた不義の疑いを解こうとしているみたいだ。
それでなくとも洛陽動乱以降、山崎との噂は確固たるものとなり、生暖かい視線が増えた。
でも、だからこそ皆には妙な勘違いはして欲しくないと思う。
しどろもどろながらも今日の経緯を伝えていくと、布団を敷き終えた平助がゆっくりとこっちを向く。