飼い猫と、番犬。【完結】
「あの人、嫌いなんじゃなかったの?」
言葉の端々から、平助の苛立ちが見える。
見下ろされると叱られているような気分になって、思わず肩をすぼめた。
「や、今でも別に好きじゃないですよ?」
「でも嫌いじゃないんだ?」
そう言われたら言葉に詰まる。
初めの印象が最悪だったからかもしれないけれど、共に働き始めるとその仕事ぶりは思いの外真面目で。
あれ以来、無理に手を出してくることもない。
正直最近は、以前程毛嫌いするものでもないかなぁと思い始めていた。
それに。
「……まぁ、一応、命の恩人ですし」
あの時、上手く誤魔化してくれたのもあいつ。悔しいが確かに恩はあるのだ。
少し買い物に付き合ったくらいで全てが返しきれるなんて勿論思ってない。
受けたものは返さなければ。
まぁやっぱり少し、癪ですが。
「……それで手懐けられちゃったの?甘いよ総司」
気に食わない、とでも言うように、平助がくっと眉を潜める。
だけどその言葉には私も同じく眉が寄った。
「別にそういう訳じゃ」
「総司は土方さんの為についてきたんじゃないの?それなのに突然現れたあの人に簡単に気を許すの?何で……っ」