飼い猫と、番犬。【完結】
土方さんの為に。
絞り出されたその言葉に、ちりりと胸が痛む。
それは私達がどうのということではなくて。ああ、やっぱりそう思われていたんだなという思いからだ。
そうじゃないのに。
私はただ、また一人になることが嫌だっただけなのに。
末っ子の私。上には既に女が二人いて、母は私を身籠った側から次こそは男をと周囲に望まれ続けた。
生まれた私を男として育てる程に追い込まれていた彼女は、私がまだ袴着(七五三の五つの歳に男児が行う儀)を迎える前に、父のあとを追うようにして呆気なく死んだらしい。
もう顔すら思い出せない。
今思えば、母もまた、憐れな女だったのだと思う。
だからもう、恨んではいない。
だけど、女としても男としても中途半端な私をもて余した姉も、結局は私を見放した。
内弟子なんて体の良い子捨て。
それでも、近藤さんに会って、皆に会って……土方さんに会って。やっと一人じゃないと思えたところで、今回の上洛の話が舞い込んできた。
また一人になることだけは絶対に嫌だった。
一人残されるくらいなら幸せなんて要らない。
女も捨てる。
何も要らない、望まない。
だから皆といたい。
私はただ、そう、願っただけ。
「平助」