飼い猫と、番犬。【完結】
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「ほら行くで」
一度は押し付けた風呂敷包みをその手から奪えば、沖田は僅かに逡巡しつつも大人しくついてきた。
その尻尾のように揺れる髪の向こうで、藤堂くんの不愉快に歪んだ顔が俺達に向いている。
……否、正しくは、俺に。
隠すことなく向けられたその感情に、俺もまた一瞬笑みを深くし、さらりと前を向いた。
古今東西嫉妬とは醜いもの。
だが男のそれにだけ括って言えば、向けられる身としてはこれが意外と気持ち良くもある。何故ならそれ即ち羨望でもあるからだ。
いつまでも友でしかいられない自分と、あくまで『男』である俺。
良い悪いは兎も角としても、沖田に異性として認識されている俺は、藤堂くんにとっては邪魔者以外の何者でもない。
恋仲の噂は本当だと周りが認め始めたのも、それを加速させているのだろう。
加えて、沖田自身の俺への態度も徐々に軟化してきている。
彼からすれば心中穏やかではない筈だ。
……まぁ?
折角こない町で会うたんや、ちぃっとばかし見せつけさしてもらお。
そんな悪戯心で沖田の手から荷を浚ってみたのだが。
まだ数歩しか進んでいないところで、包みがクンと引かれた。
「持ちます」
甘えときゃええのに律儀なやっちゃな。