飼い猫と、番犬。【完結】
吹き付ける強い風が、縁側に立つ俺達にも滴を飛ばす。
湿った土の臭いが瞬く間に俺達の間にあいた微妙な距離を埋め尽くした。
流石にあまり長居はしたくないと僅かに顔をしかめ、斜め上へと逸らした視線を目の前の青年に戻した時だった。
「あんたにはわかんないよ」
漸く、藤堂くんがぽそりと声を漏らした。
「俺が初めて会った時にはもう、総司はあの人を見てた。ずっと、何年も。どれだけ頑張ったって俺は兄弟みたいだって言われて終わる。悔しかった、悔しかったよ。けど、恋仲になったって教えてくれた時のあの顔を見たらもう、何も言えないじゃないかっ」
顔を伏せ、滔々と吐き出す言葉は、俺にというよりただ自分に言い訳しているようにも見えた。
だから仕方ないと。
だが、到底納得しているようには思えない。諦めて、諦めきれていないだけだ。
過去のことは知らないが、今はまた状況が違う筈。
ならいっそ、
「いっぺんはっきり言うて玉砕してまえ、こん阿呆」
と思う。
一応上役である藤堂くんに少しばかりはっきり言い過ぎたかも?と思ったのも束の間で。
まぁ良いやと開き直った俺を、その人は一瞬目を丸くして見つめたあと、キッと睨み付けてきた。
「ふらふら遊んでるだけのあんたに適当なこと言われたくない。どうせまともに女の子相手にしたことないんでしょ」
「いいや?一応嫁はんおったけど」