飼い猫と、番犬。【完結】
四百四病の外
「お前の部屋は隣だろう、総司」
夕餉を終えて、あとは寝るだけとなった今。
ゴロゴロと畳に寝っ転がる私の横で布団を敷く一くんから静かな突っ込みが入った。
すっかり慣れたこのやり取りだけど、流石に今日ばかりはちょっとだけ寂しくて、唇が尖る。
「……もう少しだけ」
だって一人は何となく寂しいんですもん。
山南さんの葬儀から半月程で、結局屯所は西本願寺へと移転することになった。
此方の坊さん達にはかなり嫌な顔をされたようだけど、土方さんの強い押しと伊東さんや山崎の働きかけもあって、最終的には彼らも首を縦に振ったらしい。
三人に上手く丸め込まれた坊さん達の姿がありありと想像出来てちょっと可哀想だけど。
兎も角、今までとは比べ物にもならない広大な屯所を手に入れた私達は、ぎゅうぎゅうだった部屋から一転、助勤以上には個室まであてがわれることになった。
でも、本音を言えば相部屋のままが良かったと思う。
今まで側にいた誰かがいなくなるのは寂しい。暗い部屋でぽつんと布団に入るとそれは更に強くなる。
正直、山南さんのことだってまだ少し辛い。
無理矢理逆隣の部屋に決めた平助はまだ江戸から戻らないから、必然的にこうして一くんの部屋にばかり入り浸ることになっている。
なのに。
「……私も行きたかったな」
明日から土方さんと伊東さんの二人に加え、一くんまで江戸に行くことになったのだ。