飼い猫と、番犬。【完結】
月明かりを朧に映す硬い瓦屋根に身を横たえる。
昼間、久々に会った琴尾のお陰で少しばかり色々な事を考えてしまう夜。
ちらちらと星を隠しながら空の高くを流れる夜色の雲を暫し眺めて、俺は瞼を閉じた。
陽の光とはまるで違い、静かに体温を奪うような冷たい月の輝きがじわりと体を侵食する。
頭を冷やすには丁度良い夜だった。
琴尾と会って、話して。
あれの今後が気にならない訳でもなかったが、それに呼応するように浮かぶのは沖田のこと。
何故か無性にあれに触れたくて仕方ない。
柄じゃないと思う。
思うのだが、否応なしに甦った過去の記憶にふと、人恋しくなってしまったらしい。
体の奥で熱が疼く。
そんな日に限って沖田は早々に部屋の明かりを消した。
楼にでも行こうかとも思ったが何となくそんな気分にもなれず、結局一人此処にいる。
……くそぅ沖田め。
人間関係には糞がつく程真面目で自己犠牲の激しいあいつ。ここ最近俺を避けている理由も大方想像がついた。
どうせまたうだうだ考えて他人に遠慮しているのだ。
けれどもまぁその心は確実に俺へと傾いている。
特に急くつもりもないし、たまに離れるのも良いだろうとそのままにしておいたのだが、からかう相手がいないのも流石に物足りなくなってきて。
そろそろわからせてやろうと思っていたところでの今日。
最後にあれに触れたのはいつだったろう。
お陰でこっちは色々と……足りない。