飼い猫と、番犬。【完結】
「っ」
油断していたのだろう、手を引けば沖田の体はいとも簡単に腕の中に収まった。
髪が靡いて露(アラワ)になった首に唇を寄せると、間近に感じる沖田の匂いとその吸い付くような柔肌に、ついいつもより力が入ってしまう。
月明かりの下でもはっきりとわかる付いたばかりの赤い印をぺろりと舐めて、強張る沖田を見上げるように視線を絡ませた。
「誘いよる自分が悪い」
焦りと羞恥に悶えるそいつはいつになく『女』の顔で。
ん、悪い。
そんな顔をされたら男なら誰でも襲いたくなるというものだ。
「さ、誘ってなんていませんっ」
「ほな生まれもってのあれか。なんちゅう助兵衛な才能や」
「ちょ!人聞きの悪いこと言わないでくださいよね!」
「ここんとこずっと誰かさんに避けられとったさかい、これでも俺結構喜んでんねんけど」
意地悪く微笑む俺に、沖田がぐっと言葉に詰まる。あまり突っ込まれたくないところなんだろう。
勿論無視だけれど。
「なんで避けてたん?」
俺も一応健全な男な訳で。
こいつの我慢に付き合っていたらいつまで経っても何も出来ない。
そろそろ認めてもらうで?
「別に理由なんか……」
「ふぅん?」
「……だって、元々私は貴方なんてっ」
「俺はそーちゃん、好きやけど」