飼い猫と、番犬。【完結】
代わりに重ねた唇。
さっきの二の舞は御免だと、初めはほんの少しだけ。
けれどきゅっと閉じた目を恐る恐ると開いた沖田からは抵抗する様子も見られない。
仄かな熱を湛えたそれに満足した俺は僅かに頬を緩ませると、再びそっと唇を寄せた。
柔らかに触れて、吸って、食んで。
半ば固まるそいつを啄むように何度も口付ければ、冷たかった唇にも少しずつ熱が拡がる。
ゆっくりと時間をかけて味わったその柔らかい唇から漏れる吐息に甘いものが混じったところで、今度は深く。
瞬間、その指にぎゅっと力を籠めた沖田だったが、結局大人しく俺を受け入れた。
相変わらず感度の良いその体からはすぐに力が抜けてゆく。
楼の女とは比べ物にならないくらいたどたどしい反応に、益々熱が煽られた。
こんな初々しい女を相手にするのはいつぶりだろう。慣れに慣れた口付けよりもよっぽどそそる。
男とは得てして女より優位でありたい生き物で。
これぞ調教のし甲斐があるっちゅうもんや。
新たに見つけた楽しみに沸き立った俺はその濡れた唇を舌先でつつつとなぞると、とろんと目を開いた沖田に何も言わせぬまま、またその唇を食らった。
しかしながら先に進めないというのは何とももどかしい。やり過ぎると困るのは俺である。
くそぅ、勘弁したるなんて言わんかったら良かった。
すっかり蛇の生殺し状態な俺。
さっきの自分自身に内心密やかに文句を垂れると、仕方なく絡めた舌をほどいた。