飼い猫と、番犬。【完結】
だってあんな状況なら仕方ないじゃないですかっ。
起きたら襦袢姿で男と同衾とか有り得ない。
ああなった経緯はよく覚えてないけれど、恐らく私が寝てしまったんだろうと推測される。
あの日は夕方にも山野さんと打ち合ったし体自体は疲れていた。
けれど逆に冴えてしまった心を落ち着かせる為にちょっと表に出ただけなのだ。
普段でも寝ている筈のあの時刻、無理矢理拐ったあいつにも非はあると思う。
屋台を離れた私達は、ゆっくりと屯所のある西へと歩き出す。
気の良い山野くんのことだ、声を掛けてくれたのも恐らく心配してのことだろう。
下役に気を使わせた事が申し訳なくて、気不味いながらも口を開いた。
「……その、喧嘩じゃないです、……多分」
じゃあ何だと聞かれるとよくわからないのだけれど。
一応、あの夜私達は晴れて(かどうかは微妙ですが)本当の恋仲になった……と思う。
けれど今のこれは言い争った訳じゃなくて、ただ私が山崎からも、あいつが望むコトからも逃げているだけ。
今まで守っていたものをそう簡単に許せる筈もないし、あの二人の事を考えるとやはりまだ少し迷ってしまう。
時折女の人の所に通う土方さんは兎も角、平助とはもう一度ちゃんと話した方が良いんじゃないかっていう思いが拭えなくて、躊躇……するのだ。