飼い猫と、番犬。【完結】
しかしながら、これまで私が隊士達の中で回っている噂を認めたことはない。
だから今こうして話すのは暗に噂を認めてしまうことにもなり、私にとっては中々勇気のいることだった。
それでもこの感情を認めた今、うそぶくのも違う気がしたから。
……これで良いんです、よね。
「……それなら良いんです。まぁその、俺で良ければいつでも話聞きますから」
力不足ですけど、と眉尻を下げる山野さんからは、からかいや面白半分で聞いてきたんじゃないというのが伝わってくる。
それが凄く嬉しい。
隊務の時だとゆっくりと話したりは出来ないけれど、こんな風に話すのもまた良いなと思う。
「でも沖田組長意外と初でびっくりしました」
「……五月蝿いですよ」
「あ、いえ!決して悪い意味じゃなくて可愛いなぁと!」
「それ、褒めてませんから」
情けないところを見られてしまったのは確かだけど、仮にも男として通っている人間にそれはどうなのか。
横目に睨みつけるとわたわたと焦る山野さんだって、中性的な顔立ちをしている。
勿論私とは違って彼は本物の男、その体はやはり私とは違う。
着物の下にある逞しい体を羨ましく思うものの、以前程その感情が強くなくなったのはあいつの所為……なのだろうか。
「あっ、あのっ、お、俺は別に沖田組長なら良いかもとか思ってませんからねっ!」
「わかってますよ。さー変なこと言ってないで帰りますよ」