飼い猫と、番犬。【完結】
平助は今日、確か昼の巡察だった筈だ。
思い立ったが吉日ということで夕餉の前を見計らい、その姿を探した。
しかし会いたいと思った時に限って見当たらない。
以前なら大抵日野からの仲間の誰かと一緒にいたのだけど、最近は同じ組の隊士達といることの方が多かった。
今日もやっぱりどの助勤の部屋にもいなくて。仕方なくそのままの足で屯所内を彷徨く。
しかし陽も大分傾き始めた今時分、縁側に吹く風もかなり冷たくなっていた。
ご飯の後でも良い気がしてきました……。
どうせ夕餉の時には顔を合わせる。ならその時に約束を取り付けたら良い。
うん、そうしましょう。
うんうんと自分を納得させて、冷えた指先にそっと息を吐きかけ部屋に戻ろうとすると、ふと見たことのある顔が向こうから歩いてきた。
あれは確か平助と同じ組の……。
百を超える程に膨れ上がったこの新選組、流石に全員の名と顔が一致する程の記憶力は持ち合わせていない。
が、その三人は以前平助と一緒にいるのを見たことがあった。
……一応聞いてみますか。
「あの」
私から声を掛けられるのが意外だったのか、三人は少しばかり目を瞠る。
けれど直ぐ様『はい?』と頬を緩めた彼らに私も僅かに口角をあげた。
「藤堂さん見かけませんでした?」
「ああ、今日は伊東さんと呑んでくると言って出掛けましたよ」