飼い猫と、番犬。【完結】
門の前の開けた空間に足を踏み入れるや否や、突然辺りがざわついた。
相手は平助だと油断していたのかもしれない。
否、油断していた。
気付いた時にはもう遅く、突然後ろから降り下ろされた一撃をかわした直後、脇腹に入った鈍い衝撃に体が浮いていた。
「ざまぁねぇなぁ」
湿り気を帯びた土を転がり、込み上げたものに咳き込みながらも素早く体を起こして見上げたその先には、三人の男。
昨日の男達だった。
そして瞬時に理解する。
私を呼んだのは平助じゃないのだと。
「……何のつもりです」
「るせぇよ、前からてめぇらみたいな餓鬼にこき使われんのが気に喰わなかったんだ」
歪んだ顔が私を見下ろす。
年上の多い此処。
そういう連中がいるだろう事はわかっていた。
立ち上げ当初からいるだけのくせにと陰口を叩かれた事も何度もあった。
だからこそ指南の時も手を抜かず、誰よりも強くあろうとした。
でもそれでもやはりこういうやつらは燻り続ける。
こうして力で不満をぶつけられると私にはどうしても敵わない。
男の蹴りに酸っぱいものが込み上げる。未だずくずくと止まらない痛みに指先が震えた。
おまけに今の私は丸腰。
間抜け過ぎて笑みが溢れた。
……さて、どうしましょうか。
「それで三人がかりで騙し討ちすか。見下げた根性ですね。そうもしないと勝てませんか?」
「……言ってられんのも今のうちだぞてめぇ」