飼い猫と、番犬。【完結】

幸い、男達が持っているのは真剣ではなく木刀だった。


流石に殺すつもりはないらしいということだけはわかる。


……まぁもしかしたらじわじわとなぶり殺そうと思っているのかもしれませんが。


兎も角、こんなやつらに屈服するのだけは絶対に御免だ。



「立てもしねぇくせによく吠えるなっ」


いやらしく口を上げた男がまた木刀を降り下ろす。


それを避けたところで今度はまた別の男に蹴飛ばされ、足で地面に貼り付けられた。


ぐりぐりと押さえ付けられる体。


腹立たしいのと同時に、何も出来ない自分が酷く悔しくて堪らない。


私にもっと力があれば、私が本物の男だったら、こうはならなかったのに。



「ほら、何か言ってみろよ」


髪を掴まれ無理矢理引き上げられた顔。目の前に現れた下卑た男の笑いにこめかみが引きつる。


恐怖なんてない。
湧き上がるのはただの嫌悪だった。


「触るな下衆」


本当、吐き気がしますよ。


プッと唾を吐きかけてやった直後、押さえ付けられていた体が再び地面を転がった。


さっきと同じ所を蹴った男に殺意すら生まれた。


なのに体は既にゆっくりと起きあがることで精一杯だった。


「てめぇっ」


激昂した声がして、胸ぐらが掴み上げられた。


──殴られる


そう無意識に奥歯を噛んで身構えた、のに。


「お、おい、待てっ!」


何故か別の男が焦る声がした。



「うるせぇ!黙って」

「そいつ、女……じゃねぇ?」
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