飼い猫と、番犬。【完結】

三日も部屋に閉じ込められた体は確かに少々動きが悪い。


そんな体で稽古に昼の巡察と続くのは無理だと判断されたのか、今日あてがわれたのは夜の巡察。昼間はのんびり出来る時間があった。


それでもさっきの失態、そして勘を取り戻す為にはただ休んでいる訳にもいかなくて、朝餉のあと、私は例の如く山野さんを誘って稽古に付き合ってもらうことにした。


何度か打ち合ったあと、少しばかり休憩をと、二人しかいない道場の隅に腰を下ろす。


適度な疲労感と温まった体はやはり心地よかった。



「もうすっかり元気そうですね」


肩で汗を拭いながら山野さんが笑う。


風邪で通したこの三日、少しの後ろ暗さと同時に、次に来るであろう質問に頬がひくりと反応した。


「ええ」

「でもそれはどうしたんですか?」


と自らの頬を指差す山野さんの目は、少し短い胴着の袖から覗く腕にある瘡蓋(カサブタ)にも移ってゆく。


寝込んでいた筈の人間があちこちに傷を作っていれば確かに不自然。


既に何人かから同じ質問を受けていた私は、苦笑いを浮かべて頬を掻いた。


「その、熱でふらふらしてたら厠に行く時縁側から落ちてしまって」

「ええっ!?そんなに酷かったんですか!?駄目ですよ組長病み上がりに無理しちゃ!夜は巡察なんですから今日はもう休んでおいてくださいね!」

「あ……はい」
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