飼い猫と、番犬。【完結】
女だからか、皆私の前ではそういう話は避けていた。
土方さんと恋仲になったあと、一度だけ左之さんと新八さんがからかう様にそんな話題を口にした事があったけど、土方さんが強行手段で黙らせて終わり。
口付けくらいはしたし、その先があるのも勿論知ってる。
でもあいつは……山崎はどう考えてもそんじょそこらの連中よりも経験豊富そうで。
正直、あまり嬉しくない。
この前だって、人が火を噴きそうな程に勇気を出してあんな事を言ったのに、結局余裕綽々な顔でかわされてしまった。
あれは優しさだ。
そうは思えど、やはりもやもやは残る。
きっと私は、あいつの知るどの女の人よりも女として未熟だ。
普通ならとっくに嫁に出て子がいて当然な歳だと言うのに、男に交じり刀を握る私は女らしさの欠片もない。
体だって……貧相。
筋肉もあまりつかないくせに丸みが出る訳でもない。手だってたこだらけで女の人の柔らかさなんてまるで感じない。
そんな私だからあの時あいつは私を抱く気にならなかったんじゃないか、なんて。
不安に、なるのだ。
その不安がまた不安を煽り、そして思い出した、いつかの女の人を。
私は何も知らない。
知らなさ過ぎる。
だから、不安になるのだ。