飼い猫と、番犬。【完結】
いつまでもこんな事でぼーっとしている訳にもいかない。でないとさっきの二の舞になる。
だからここはひとつ、恥を忍んで聞ける事から相談してみようと思ったのだけれど。
「……それってもしかして山」
「ーーっ!そっ、そこはあえて言わないでおいてくださいっ!」
誰との事かなんて丸わかりなんだけど、面と向かって口にされると恥ずかし過ぎる。
無理矢理山野さんの口を塞ぐ私は端から見たら襲っている様に見えるかもしれないが、幸い此処には私達だけ。誰を気にする必要もない。
恥ずかしさに半ば涙目になりつつ見つめ合ったあと。
離しての合図なのだろう、こくこくと頷いた山野さんが私の腕を軽く叩いた。
「……えっと、その、すみません、俺もそっちは経験がないのでわかりませんが、沖田組長は何で悩まれてるんですか?」
……意外にも未経験だったんですね。
と思ったのは伏せておく。
未だ顔を赤らめる山野さんだったけれど、それでも真面目に聞いてくれようとしているのがわかるから、私も両手の指を絡ませながらに言葉を紡ぐ。
「……だって緊張します」
「えーそんなの普通ですよ」
「……怖いですし」
「あー……でもまぁそれは俺でも怖いですよ」
「……その、どうしたら良いかわかんないですし」
「そっ……それは向こうがどうにかしてくれるんじゃないですかねっ!?な、なんとかなりますよ多分っ」