飼い猫と、番犬。【完結】


「……だと良いんですけど」


やっぱり山野さんから見てもあの人は手慣れているように見えるんですね……。


山崎なら大丈夫だと言わんばかりの言葉に多少引っ掛かる。


けれど安心もした。


怖いのは私だけじゃないのかと思えたから。


男の人に話を聞くのはどうかと思ったけれど、そういう感情に男も女もないのかもしれない。


真っ赤な顔で必死に言葉を返してくれる山野さんはやっぱり真面目で優しい人だった。



「すみません、こんな話。有り難うございます」

「や!良いんです、寧ろ話してくれて嬉しいです。そりゃ一瞬そっちも有りかもとか思いましたけどっ」

「そっち?」

「あ、や、お気になさらず!俺ちゃんと恋仲いますから!」


……初耳です。


それでいてまだだという事は、もしかしたら私達は似たような状況にあったのだろうか。


同性でしか話さないものだと思っていたこんな話も、実際話をすれば意外に良いものだった。


「お互い頑張りましょうね」

「え?あ、はい」


むくむくと湧いた親近感にその手を握り気合いを入れたは良いが、温まった体が冷えてきたのか、喉の奥に微かな違和を覚えた。


「けほっ。すみません、そろそろ戻りましょうか」

「あ、そうですね。病み上がりなんですから夜までちゃんと休んでてくださいよ」


どうやら私の周りには心配性が集まるらしい。


思い出したように真剣な顔で手早く片付けを始めた山野さんに口許を緩めて。


さあさあと急かす彼に背を押される形で、私はそこをあとにした。
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