飼い猫と、番犬。【完結】

締め切られた部屋に訪れた静寂が心地悪い。



帰れと……言われるんでしょうか。


むすっとした表情の土方さんにさっきまでの勢いが消え、どうしても少し弱気になってしまう。


あいつが何を言ったかはわからないけれど、勝手なところで進んでいる話に嫌な予感しか湧かない。


元々秘密を守ることがついてくる時の条件だった。それがある意味不可抗力だったとはいえ、入隊間もない隊士に知られてしまった以上、そう言われてしまう可能性だって十二分にあるのだ。



……あいつめ。


一体何の恨みがあって人の邪魔をするのか。


涼しい顔で前を見るその横顔が心底腹立たしい。


流石に此処では何もしてこないとわかってはいても極力あの男には近付きたくなくて、私達三人の距離はてんでバラバラ。


お陰で土方さんのこめかみが更にひきつったのが見えたけど、これ以上は埒があかないと思ったようで、至極面倒臭そうに大きく息をついた。



「んな睨まなくてももう帰れなんて言わねぇよ」


あいつに対する怒りはいつの間にか土方さんを見る視線にも滲み出ていたらしい。


呆れを含んだその言葉を頭がゆっくりと理解すると、それは想像していたものとは違っていて、思わず間抜けな声が零れ出た。


「え?」

「勘違いすんじゃねぇぞ、他の奴等にゃ今まで通り男で通す」


もう隠す必要はないのかと思えば、考えを見透かしたように土方さんはぴしゃりと否定する。


そしてとんでもないことをさらりと言ってきた。
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