飼い猫と、番犬。【完結】

俺の後ろをとことこと無言でついてきた沖田を部屋に入れ、小さな明かりを灯す。


つけたままにしておいた火鉢が狭い部屋に僅かな温もりを与えていた。


火皿に浮かぶ仄かな明かりを横目に後ろを振り返ると、居心地悪そうに立ったままのそいつがいてまた笑ってしまった。


徐に立ち上がり近寄れば、それは分かりやすく目を泳がせる。


明らかに意識しているその反応が堪らなく、楽しい。



「痛みは?」

「……ないです」

「ん、ほな早よ脱いで」

「ぬっ!?」

「だって脱がんと診れんやん、診察や言うたやろ。それともなんなん自分」



何でもない顔で言葉を句切り、むくむくと湧き上がった加虐心を唇に乗せてその顔を覗き込む。



「やらしー事でも考えた?」

「み、せたら良いんでしょうっ!」


……ほんま単純なやっちゃなぁ。


いつも同じ流れだというのに気が付いていないのだろうか。


まぁ俺に背を向けごそごそと長着を引っ張るそいつは、ただ単に引くに引けなくなっているだけかもしれないが。


相変わらず俺に笑みが向くことはないし、色気も皆無な沖田であるが、そんな反応にすら一々喜びを覚える己の趣向が少々不安な今日この頃。


くつりと喉を鳴らしたところで、必死で露出を最低限に留めようと奮闘した沖田が振り返った。



「これで文句はないですよねっ」

「ないない、元気元気、もーええよ」
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