飼い猫と、番犬。【完結】
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長州訊問使である永井尚志に随行し、局長以下伊東、尾形、武田の三人が安芸へと発って暫く。
京の町は年の瀬に向けて慌ただしさを増していた。
金子の回収なのだろう、帳簿を持ったでっちが長屋の前で必死に中の人間とやり取りするのを何度も見かける。
暮れに金が入り用なのはどこも同じ。
それに伴い起きる揉め事やら食い逃げやらの仲裁にうちの連中もあちらこちらで動き回っていた。
そんな疲れもあり、加えてこの寒さ、この時期は何かと体調を崩す人間も多い。
故に、いらぬ仕事も増える。
「……けほっけほっ」
「無理するからや阿呆」
「あんたと違って総司は真面目で責任感が強いんだよ。薬置いたらさっさと出てけば?」
……増える。
「自分こそ男のくせに軟弱な体しとるさかい風邪ひきよんねんど阿呆。病人は黙っとれ。ちゅうか何で自分まで此処おんねん」
「此処はそーゆー部屋であんたはただの薬師でしょ。移しちゃ悪いからもーどっか行って良いよ」
シッシと犬猫を払う仕草を俺に向けるのは赤い顔をした藤堂くんで。
その隣では布団から目だけを出した沖田が俺達のやりとりに見て見ぬふりを決め込み、視線を明後日に向けている。
ええ度胸しとるやないかい。