飼い猫と、番犬。【完結】
何の因果か、揃って熱を出したこの二人。色々と吹っ切れたらしい藤堂くんは感情を隠す必要もなくなり、堂々と突っ掛かってくるようになったからまた面倒臭い。
何で俺がお前の面倒までみたらなあかんねん。
男には例え感謝されてもあまり嬉しくないというのに、感謝どころか邪魔物扱い。少しばかり虐めたくなるのも致し方あるまい。
「……せや、薬師やな。ほんでもって副長から自分等の面倒任された隊医でもあんねん。せやさかい隊務はちゃんと遂行させてもらうで」
こういうお子様には大人な態度が一番だ。
すっと笑みを浮かべ、恰も気にしていない素振りでゆったりと持ってきた膳に手を伸ばす。
そうすれば案の定藤堂くんは頬を引きつらせ、眉を潜めて俺を見据えた。
「薬置いたら別にもう良いでしょ?さっさと──」
「はいそうちゃん、お薬や」
「へっ? っむ」
さらりとその視線を無視して、持ってきた丸薬を沖田に飲ませる。
勿論、口移し、で。
「ーーっ!!?」
「ちょ……っ!?あんた何してっ」
すっかり他人事を決め込んでいた沖田は簡単にそれを許し、隣からは焦りに焦った声が聞こえた。
ざまぁみさらせ。
これは少々薄情な沖田に対したお仕置きでもあった。
沖田がそれを飲み込んだのを確認して顔をあげた俺は、肩を掴んできた藤堂くんににっこりと目を細めた。
「安心しぃ、自分にもちゃあんと飲ましたるさかいにな」