飼い猫と、番犬。【完結】
んな訳あるかい。
流石にあれが常套とか俺も嫌だ。
まぁしかしその勘違いは置いとくとして、訂正が一つ。
「せやけど俺別に男色やあらへんし、あんなん滅多にせぇへんで」
俺だってそうほいほいと男の口を吸う訳ではない。
そりゃ一人で仕事をしていた時は俺も生きる為にとそれなりに色々やってきた。
正直接吻くらいなら相手が男だろうがなんだろうが気にせず出来る。
その辺の感覚はこいつらとは違うと自覚はあるが、今日の問題はそこじゃない。
「俺かて暇ちゃうねん。俺がおらん間あれと二人とか何や癪やろ」
あれだけ考えて俺を選んだ沖田だ、今更あいつに心を移すことはないとわかってる。
けれど琴尾の事があるからか、ああいう輩はどうしても遠ざけたくなる。
不安、とはまた違う気がする。
独占欲に近いのかもしれないとも思うが、副長や斎藤くんにはこの感情は湧かないし、特に沖田の行動を制限したい訳でもない。
まぁ細かいところはよくわからないけれど兎に角だ、吹っ切れたあとのあいつは──
なんっか気に入らんのや。
「……何で隠れんねん?」
「……や、なんか貴方が柄にもないこと言うから」
ズルズルと布団を上げて顔を隠した沖田からはもうさっきの蔑む空気はみられない。
それどころか矢鱈と照れたそいつが不覚にもちょっと可愛くて、改めて藤堂くんが消えたことに満足する。
やっぱあいつにゃ見せとーない。