飼い猫と、番犬。【完結】
邪魔者はもういない。
くっと喉を鳴らして人形に丸まる布団に手を伸ばす。
「そーでもないで、俺好きなもんは全力で楽しみたい人間やし」
だから嫁より仕事で離縁した上、興味本意だけで今こんな所にいるのだ。
全ては心が動くまま。
欲しいものは欲しいし嫌なものは嫌。やらずに後悔するくらいなら好き勝手してから後悔する。
周りから見た俺がどうなのかは知らないが、俺の本質は中々正直者だと思う。
「ちゅーことでそーちゃん、俺もー行かなあかんしちゅーさせ」
「なっ、何がちゅーことなんですかそれっ」
ぺろんと捲った先では赤い顔をした沖田がわたわたと狼狽える。
「ええやん、自分かてこん前またなー言うてしてったくせに。それに最後があいつとかややわ俺」
「あ、れはっ!…………や、でもあれのあとではその、何か微妙に複雑なんですが」
「細かいことは気にしたあかん。早よ忘れ」
「忘……んっ」
こういう時沖田は言い訳が長い。
それも本気で嫌がっているのではなく、ただの照れであるからこちらもつい急く。
其れ者よりも果てしなく手の掛かる素人娘であるが、全てにおいて教え甲斐があるのは中々どうして、楽しい。
「ほなお利口さんに寝とくんやで?」