飼い猫と、番犬。【完結】

どうせもう土方さんが止めないのはわかっていた。


失礼しますと言い残し、座ったままの山崎の衿を引っ掴んで部屋の外へと連れ出すと、ほんのりと西日に色付き始めた廊下をずんずんと突き進んでいく。


あまり人に聞かれていい話じゃない。出来たら人気のない場所で話がしたかった。



「ちょ、なんや急に積極的やん。もしかしてさっきの続きしたなった?」

「その口を削ぎ落とされる前に黙ってください」


貴方の頭にはそれしかないのか!


器用に後ろ向きでついてくるそいつに、自分でもこめかみに筋が浮いているのがわかる。


用さえなければこんな奴、口もききたくないのに……っ!


苛々が増すなか場所を探すのも面倒で、いっそこのまま門外へ出てしまおうか、なんて思っていた時だった。



「そない二人っきりになりたいんやったらちゃんと言うてや」

「わ!?」


それは、廊下を曲がる直前。
突然の浮遊感が私を襲った。


流れる続ける視界に頬をさらさらとした黒いものが擽って。はっと顔を上げるとそこにあった山崎の横顔に慌てて声が漏れた。


「何をっ」

「ほうら嬢ちゃん、黙っとかな舌噛むでぇー」

「誰がじょっ!?」


私を抱えたままだというのに軽々と庭に降りたそいつは、ちゅ、と私の額に口づけた直後、一気に屋根の上へと跳躍した。



ひぃ……っ!?
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