飼い猫と、番犬。【完結】
「なんですのん、そのめっさ軽い感じ。ちょいとそこまでお使いにーっちゅうのとちゃいまっせ?」
「時間がねぇんだよ、明後日には発ってもらう。急だがまた永井さんが安芸に下る事になったらしくてな、うちもついてく事になった」
相変わらずの忙しさに筆を走らせ続けるその人曰く。
年末に局長らが安芸から戻ってきたばかりだというのに、今回また幕府の決定を伝えに出向く事になった役人達に追従して彼方の探索に行くらしい。
しかも前回の面子から武田が外れ、今度は参謀気に入りの篠原がついていく事に。
そして前回同様、役人である永井らに同行したあとは二手に分かれて彼方を探索するとのことで。
「あーそら目付けがいるわな」
わざわざ面子を替えてまで側近を連れていく理由を探るのが此度の任務のようだ。
「そういうこった。ま、京でも最近何やらこそこそ動いてる連中がいるようだからな、向こうで怪しい動きがないかも併せて見てこい」
「もー人使い荒いなぁ」
「一人でとは言わん、吉村も一緒だ。あとで勘定方に多めに用立ててもらえ、今回はちと長ぇぞ」
そう言って、また暫く局長がいなくなる故の雑務が忙しいらしい副長に追い出されて廊下を歩く。
今日明日の非番は旅支度を整えるのと最後の休息ということらしい。
行った事のない土地、どこか心が沸くのは俺の性分だ。
……長い、なぁ。