飼い猫と、番犬。【完結】
わざわざ監察が二人も揃って安芸まで行くのだ、何かしら手土産があるまでは帰れまい。
二月か三月かそれ以上か。
兎も角暫く京に戻れない事は間違いない。
それに不満はなかった。寧ろかつてない大仕事に既に思考がそちらに傾きかけている。
けれども一つだけ、それとは関係のない事も浮かぶ。
長く屯所を空けることになるからこそ、思うこと。
それは。
「しよ」
やっぱこれやろ。
「……は?」
布団を敷いていた沖田をかっ拐い、俵担ぎで連れてきてすぐ。
軽く口付けてするりと腰紐をほどいた俺にそいつは一呼吸おいて暴れだす。
「や!一体急になんですかっ!明日は巡察もあるし無理ですよっ。ていうか私は寝不足なんです!貴方昨日も」
「だって俺明後日から暫くおらんのやもん。明日はゆっくり寝たいさかい今日しかないやん」
「は?」
かなり本気で俺を押し返そうとしていた手が止まる。
「任務やさかい詳しくは言えんけど二月三月(フタツキミツキ)はおらんと思うし」
「え、そんな長」
「せやし自分が淋しないようしっか覚えさしといたろー思て」
「は?や、ちょ待っ、まだ話」
「は明日や」
言葉ごとその唇を塞いで、乱れた寝間着の隙間に手を差し込む。
その身体を知り尽くした俺である。
もぞもぞと往生際悪く抵抗していた沖田が陥落したのはそれから程なくの事だった。