飼い猫と、番犬。【完結】
閉めた雨戸の縁が煌々と輝く朝。
明らかにいつもより遅い起床に沖田が隣で頭を抱えてぶつくさ文句を言っている。
「だから寝不足だって言ったのに……」
既に始まっているだろう朝稽古。
慌てて飛び起きたこいつだったが、昨日付けたばかりの鮮やかな印を晒しての途中参加は目立つのではないかという俺の進言によって、今力なく此処にいる。
「ええやん稽古くらい。俺との朝も暫くないんやでー?」
「良くないです!……良くないですけどぉ……はぁ」
勢いよく此方を向いたかと思えば不満げに頬を膨らして盛大な溜め息。
ぱたと腕に落ちてきた額に沖田の感情が見えてつい頬が緩んだ。
「話の続きはせぇへんの?」
「どうせ何も言えないんでしょう?ならいいです」
理性と感情に挟まれながらも珍しく甘えてきたそいつが可愛くて困る。
男にも朝の事情というものがある。
もっぺん襲ってもええやろか。
「っ、こほっこほっ」
今からなら朝餉には間に合うかなんてことを考えた直後、沖田がまた乾いた咳を漏らした。
「……治らんのー」
「冬はいつもこんなですよ。どこかしらでもらってくるんです」
「難儀なやっちゃな。もっと食うてもっと肥えーや」
「っ、どっ、どこ触りながら言ってるんですかっ!」