飼い猫と、番犬。【完結】

そう尋ねると、お梅さんはこくりと小さく頷いて。


その横顔がとても美しく凛としていて……私も、腹を括った。


初めはただ貸した金の取り立ての為だけに芹沢さんの元を訪れていた彼女。


それがこのような関係になるとは、もしかしたら本人達も思っていなかったのかもしれない。


けれど今、そうきっぱりと言ってしまえる彼女の想いはひしと伝わってきて。


私は刀を握る手に力を籠めた。


少しでも苦しまず逝けるようにと斬り落とした首は、まるで自ら動いたように芹沢さんの顔の傍で止まり、覆い被さるように崩れた体は、愛しい男を抱き締めているようにも見えた。


お梅さんは一人で生きることよりも共に逝きたいと願った。


ならそうさせてやりたいと……思ったんです。


それも一つの愛し方だと思うから。



最後に見たその白く華奢な指を思い出して無意識に表情をなくしていると、ふと土方さんが足を止める。



「おめぇは……」


どこか苦しげに吐き出された声は先を紡ぐことなく尻切れに雨音に消えていって。


でも言いたいことは十分過ぎる程に伝わってきたから、これまた腹の底がチリチリと疼く。



「これは私が決めたことですってば。さ、早く戻りましょう、山南さんと左之さんもとっくに行ってしまいましたよ、副長」


トン、と背を押すと葛藤を払うようにおもむろにその足が動き出す。


あえて役職で呼んだのは私の小さな抵抗。


土方さんはもう何も言わなかったけと、それで良かった。


だって私が望んだこのことで、これ以上この人を困らせる訳にはいかないから。
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