飼い猫と、番犬。【完結】

あの頃の私達はもういない。
此処にいるのは新選組の土方歳三と沖田総司だ。


そうなると決めたのは私。
だからこれで良い。


自分勝手な淋しさはあるけれど、それでも過去は確かにまだあの人にも残っているのだと気が付くことが出来たから。


私達はきっと、これで良い。





「こほっ……ついに治せとのお達しも出たことですし、今日は夕餉まで少し休みますね」


きゅっと肩を竦めて微笑むと、二人はどこか困ったような笑みを見せた。


未だ土方さんとのことになると腫れ物に触るかのようになる二人に私まで苦笑いになる。


けれどそれも二人の優しさなのだと思えばやはり表情も緩んでいく。



「暫く飴には困りません」


貰ったばかりの桂飴を一つ口に入れる。カランと乾いた音を立てたそれは仄かな優しい甘さだった。


美味しい、笑顔でそう言った私に漸く二人も安心したように笑った。



「……横になっておくと良い。寝ていたら起こしてやる」

「えー一くん狡っ」

「お前は今から使いに出るんだろう」

「むぅ……気を付けてね総司、一くん意外にむっつり助兵衛だから」

「おい平助」

「じゃーひとっ走り行ってきまーす」


短い髪、身軽に逃げてく平助は確かに子猿に見えないこともない。


珍しくちょっぴり動揺した一くんが少し意外で、ちらりと横目で盗み見る。


「……違うぞ?」

「ぷ、はい」


その真意は兎も角。
耳だけ赤い一くんは結構可愛い。
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