飼い猫と、番犬。【完結】
収穫はあった。
長州征伐に乗り出した幕府と奴らとの戦は安芸に行かねば見れなかった。
数では圧倒的に負けていながらも幕府軍を敗走させる程に追い込んだ長州側。
その手にあった新式の銃は高々地方の一藩のみで集められるような物ではないだろう。
それが意味するもの。
これからどうなるのか。
それらを考えるのはうちの主の役目。
兎角俺達は戦禍に巻き込まれぬようにと引き上げ今に至る。
けれどまさかこれ程長く塒(ネグラ)を空ける羽目になるとは思ってもみなかった。
港が近いとはいえ、華やぎも賑わいも京や大坂には及ばない。
やっと帰路についたのだ、この心身共に枯れ果てそうな息詰まる生活はさっさと終わらせたい。
……それに。
俺でも少しは考えるのだ、あの素直でない女の事を。
琴尾も然り、女は長く構ってやらねば不満を持つ生き物。沖田が京に上った理由も淋しさ故だ。
俺がいなくなった途端活き活きとする藤堂くんの姿が目に浮かぶ。
……、帰ったら滅茶苦茶犯す。
何事も目標が大切だ。
安芸での目的を果たした今、次の目標はそれしかない。
ついでに水分補給を終えた俺は、大きく一伸びして立ち上がる。
まだまだ先は長いのだ。
「ほれ飲んだら行くで」
「う、はい……」
「男やろ、気張れ気張れ」
それまでもう暫くだけこいつの面倒もみてやろう。