飼い猫と、番犬。【完結】
直後だ。
「だ、めですってば!!」
「い゛っ!?」
またも髪ごと引き剥がされた。
「ワレええ加減にせぇや何すんねん!」
自分とおったらいつか禿げるわ!
ズキズキと痛む頭と首を擦り、沖田を睨む。
「こんなとこで盛る方が悪いんです!お風呂ですよ!?このあと皆だって入るんですよっ!」
「ええやん!たまには場所変えた方が自分も興奮するやろ!」
「ししししませんよ馬鹿馬鹿変態っ!!、けほっこほっごほっ」
……分かりやすいやっちゃな。
真っ赤な顔で噎せるまで動揺する沖田は中々面白い。
そんな反応をされるとこのまま少々強引にもコトを進めたくもなるのだが、ここで不興を買って今日はそれ限りとされるのはやはり本意ではない。
故に、咳が治まった頃を見計らって口許にあった手を掴み上げると、軽く唇を啄んだ。
「ほな湯冷めせんうちに俺んとこ来(キ)ぃ」
かっ拐うばかりだったこれまで。たまには自らの足で抱かれに来ればいい。
「っ」
「ほなまぁ俺は先上がるし自分ものぼせんうちに出ぇや」
どんな顔で何を考えながらやって来るのか。そんなことを思えば部屋で待つのも楽しそうだ。
兎角、目的はしかと果たす。
今の風呂で鋭気を養った俺は麻の着流しに身を包み、生温い真夏の空気に下駄を鳴らした。