飼い猫と、番犬。【完結】
別に身体を重ねるのが嫌だという訳じゃない。気持ち良さだって勿論感じるし、ちゃんと想われているのだと実感だって出来る。
こいつが求めるのなら、と思うところもある。
でも、違うのだ。
たまには何もせずただ寄り添っていたい。誰にも気を使わず邪魔されないところでのんびり刻を共有したい。
身体以外の繋がりだって感じたい。
そこにいるだけで良い。
そう思うのは女だけなんでしょうか。
ぎゅっとその胸に抱きつきながら、そんなことを考える。
肩口に口許を埋めて見える景色は夜のものと似ていて、少しだけ身体の芯が熱くなる。
でも今はやっぱりこうして布越しに触れ合う温もりが心地よくて、このままでいたいと……思う。
「……わかったからちょい放し」
こつん、と顎で叩かれて、山崎を見る。
暫く黙(ダンマ)りだったそいつ。
もしかして少し怒ったのかもと思っていたのだけど。
「しゃーない、我慢したろ」
垂れた目を細めて笑うそいつは言葉に反して嬉しそうだ。
「えと、良いんですか?」
「嫌ややて言うた方がええ?」
「や、そういう訳じゃないですけど」
大人し過ぎて逆に怖いと言ったら怒られますかね……。
こうもあっさりと受け入れてもらえるとは思ってなくて、素直に喜べない私に山崎が笑む。
「たまにはええんちゃう?ま、せやなぁ」