飼い猫と、番犬。【完結】

労咳──死の病。


土方さんの父母もそれで亡くなったらしい。あの人もまた同じ病なのだと知った時はどれ程泣いたかわからない。


熱が続き床に伏せ、弱っていくあの人を側で見た。誰もがもう駄目だと諦め、親戚の人達が最期を看取ろうと集まった。


なのに、あの人はそんな死病をもはね除けた。


これくらいで死ぬ訳ねぇだろって言って笑った。


あの時の事はもう私達にとって、流石土方さんだという笑い話でしかなかったのに。


それがまさか、何で……──








「奏?」



ふと呼ばれた名にはっとする。


我知らず握り締めていた山崎の長着が目に入って、それからゆっくりと視線を上げた。


訝しげに私を向くそいつと目が合うと、この距離感が急に居心地悪くなる。


全てを見透かしそうなその双眸が、怖い。



「あ……はい、飲みます」

「どしてん、自分今何か考えとったやろ」

「や、何でもないです。苦くて嫌だなって思ってただけですから」



……まだ言えない。








(当時労咳は遺伝によるものという認識もあった。心労などによって引き起こされるとも言われていて、一概に移る病気という認識ではなかった)
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