飼い猫と、番犬。【完結】


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『……本当に、大丈夫ですから』



その言葉に違和感を覚えたのは考え過ぎではないように思う。


薬の事だった筈の話に大丈夫という言葉は適当ではないだろう。


それにあの笑顔。
滅多に見せないそれが何故あの時向けられたのか。


確かに久しく会っていなかった。沖田にもこんな一面があるのかと意外に思いながらも寄せられる思いは嬉しくあった。


けれど、今ここに来てそれはざらざらとした違和感となった。



俺は、医師ではない。


薬や人体の構造、急所には詳しくてもそれはあくまで知識に過ぎない。縫合術だけは学んだとはいえ、人を生かす事において俺はただの素人だ。


でも、人を見る事においては他より優れているという自負がある。


沖田は分かりやすい。
素直でないのは性格だけで、その表情や目はいつも饒舌にあいつの心の内を語ってくれる。


さっきの笑顔は以前にも見た。


あの血に濡れた雨の夜、副長の背を押したあの、笑顔だ。


己を殺した偽りの笑み。


淋しさや不安を隠した能面の笑い。



俺は、医者ではない。


でもあれがそんなものを付けた理由が、一つしか浮かばない。



あれは──……




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