飼い猫と、番犬。【完結】
彼なら恐らく俺のいない間も沖田の側にいた筈だ。
同じく側にいただろう藤堂くんよりも冷静に物事が見える分、それはより確かな情報に違いない。
この半年の沖田を一番よく知る人物。
やはり斎藤くんも何か思うところがあったのか、崩していた足を正座に揃え、少し考えるように視線を落とした。
「……始まりは覚えていないが言われてみれば桜の頃には気になった。元より身体の強い質ではなかった故そこまで気にしていなかったのだが……」
桜の頃……もうかなり経つな。多病なんが普通で周りはあんまなんも思わんかったんか……。
その事実に思わず舌打ちしたくなる。
けれど側にいれば何かと慣れるもの。たまに空咳を溢す程度の沖田の変化を、四六時中見ている訳ではない人間が可笑しく思わなくても無理はないのかもしれない。
「……わかった。もうええよ、おおきにや」
それさえ聞ければ長居は無用だった。今入れた情報を思案しながら踵を返す。
だが、
「風邪ではないのか」
低く呟かれた言葉がその足を止めた。
「……どうやろな」
「お前がわざわざ俺を訪ねて来たんだ、何か思うところがあるんだろう?」
真っ直ぐ向けられた眼に滲む苛立ちは自身に対してなのだろう。
膝の上で固く拳を握る彼もまた俺と同じ予想をしているのだと理解して、溜め息をついた。