飼い猫と、番犬。【完結】
昨日に続いての晴天。恨めしい程雲一つない青空だった。
でこぼこと足形に歪んだ泥濘も照り付ける日差しにすっかり固まりひび割れている。
蒸し暑い空気の中、汗で首にまとわりつく髪を紐で結んだ俺は、訝しげな沖田を引き連れ通りを歩いていた。
「……どこ行くんですか?」
「行ってのお楽しみや」
「……」
俺の答えに益々眉を寄せたそいつは小さく咳をする。
乾いた咳。確かに気にしていなければ特に変わったものではないのかもしれない。
今日は、それを確かめに行くのだ。
詳細は告げぬまま医者に行くと言って無理矢理副長命令にさせたこの外出。
普段こういうことはないだけに中々怪しまれている。
「変なとこ連れて行かないでくださいよ」
「隊務や言うてるやろ。まぁ別に茶屋で休んでってもええけど」
「……普通の茶屋なら行きます」
「普通やったらええねんな、よっしゃ、承知や」
「ふ、普通っていうのは町中にある極普通の甘味処のことですからね!決して外れたところにある見た目だけ普通の怪しい茶屋じゃないですからね!!」
くるりと方向を変えた俺の袖を必死に掴む沖田は漸くいつもの顔になって。
会わない間も変わらないその単純さに思わず鼻で笑ってしまった。
「しゃーないな、承知や」