飼い猫と、番犬。【完結】
その頭を撫でて再び元向かっていた方向へと歩き出すと、一拍遅れて沖田がついてくる。
あまり警戒されてもやり辛い。特に急く訳でもない。
甘味一つでそれが解かれるなら別に構わなかった。
それに、突きつけられるかもしれない重い事実、こうしてのんびりとした刻をとってやれるのなら、その方が良いのかもしれないと思った。
串に刺さった御手洗を頬張る沖田は至極幸せそうで、幼い童のようだった。
「……なんですかじろじろと」
「や?旨そに食うな思て。そない腹ペコやったら俺のも食うてええよ。はい、あーん」
「ばっ、馬鹿いりませんよっ」
よく考えればこうして出掛けるのは二度目。
好い仲になってからというもの、二人きりというのはほぼ床だけだった俺達。勿論それに不満などなかったのだが……。
沖田の言うようにこんな何もない刻も良いのかもしれない。
そう思うのは久々に会うからなのか、本心なのか、今だからなのか。よく、わからなかった。
「タレついとんで」
「な……っ!舐めるな馬鹿っ!!」
「ちょ、五月蝿いで自分。皆見てはるやないかい、恥ずかしな」
「っ!?」
「連れがえろううるさぁてすんまへんなぁーお勘定此処に置いときますさかいにおおきに。さーほな出るでー」
いつもと違うおちょくり方が出来るのも、また良い。