飼い猫と、番犬。【完結】
「何考えとんねんど助兵衛」
「む」
顔に熱が集まるなか、突然鼻が摘ままれる。
細められた目が呆れた眼差しで私を見つめた。
「流石に俺かてあない音駄々漏れなとこでヤる趣味はないわい。斎藤くんは兎も角原田くんなんか絶対覗きよるわ。ちゅうかせん日ぃかてあるやろ、ヤることばっか考えとったらあかんでそーちゃん?」
「なっ、違!それはあな──」
……た、でもないですけど今回は。
そりゃ何もない時もある。
でも毎回「していい?」と聞かれればそう思ってしまってもしょうがないのではなかろうか。
しかしながら早とちりともいえる己の思考に行き場のない悔しさと羞恥が口内に溢れて溜まった私は、堪えきれずに視線を逸らした。
「阿呆」
「わっ!? む」
ふ、と鼻で笑うのが聞こえて。
衿を掴まれ強引に引き寄せられたかと思うと一気に視界が塞がれる。
一瞬開いた唇のお陰で膨れた頬は元通り、なのだけれど。
「……こ、ここっ、こっこんな所で何をっ!」
「え、接吻やろ。ほな俺はこれ渡してこなあかんし、また晩に」
「へ?あ、ちょっ……!」
接吻やろ、じゃなくて!
昼間からこんな所で堂々と!
誰かに見られてたらどうするんですか!!
色々と言ってやりたい事はあるのにひらひらと紙を振って去っていく山崎は一応隊務中。
……くっそ……。
「はぁ……けほ」
どうしてもしてやられた感が拭えない中、溜め息をついた私はまた空に目を移した。