飼い猫と、番犬。【完結】
女々しいとの自覚はあるけどしょうがない、どう足掻いても私は本物の男にはなれないのだから。
それにもう、あいつの前では男である必要もない。
それ以外の刻を私は沖田総司としてただ己の責を果たす。
それが幾人もの人間を殺めた私に科された業なのだ。
「……よし」
帯に差した重い大小に触れて軽く気合いを入れると縁側を歩き出す。
その為には体の管理はちゃんとしなくちゃいけない。
折角の非番なのだ、山崎の言う通り少し休んでおこう。
なんて部屋に足を向けてすぐ。
私は漸く気付いてしまった。
曲がり角を曲がったところに佇むその少しばかり焦った気配に。
「や……まのさん」
「す、すみませんすみませんっ!決して覗こうと思ってた訳ではなくてですねっ、たまたま偶然通りかかったら見てしまっただけなんですっ」
やっぱり見たんですね!
あわあわと慌てて手を振りながら飛び跳ねるように姿を表した山野さんの正直な告白に、一気に頭が沸き上がる。
人の血はこんなに早く昇れるのかと感心すら覚える。
出来ればそっと見ないふりをして立ち去って欲しかったけれど、こんなところであんなことをしていた私達の方が勿論悪い。(私のあれは不可抗力だった!)
あまりの恥ずかしさに目眩すら起きそうな頭を押さえて、私は何とか引きつった笑みを貼った。
「……や、良いんです……此方こそ妙なところを見せてしまってすみません……」