飼い猫と、番犬。【完結】
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沖田と別れ、日差しに温もった縁側を曲がると、日陰だったそこは足裏に感じる感触までもがひやりと冷たい。
勿論俺に向いた双眸からも、温もり一つ感じられなかった。
「……俺への当て付け?」
「や?恋仲やねんし普通やろ。自分こそ覗きとはまたええ趣味で」
にこやかに言い返せば、眉間に深い皺を刻み込んだ藤堂くんは益々忌々しそうに顔を歪める。
しかしながら俺から言わせてもらえばこいつも、向こう側にいた山野くんも、勝手にやって来て勝手に見てっただけのこと、とやかく言われる筋合いはない。
「こっちに何か用あったんちゃうん?俺もそっちに用あるさかい失礼すんで」
いつまでも分かりやすく牙を剥く藤堂くんだが、正直以前程気にならなくなった。
恥ずかしそうにしながらも、目に見えて俺に甘えて来るようになった沖田。昔の俺なら息苦しさを感じるだろうそれも、今は不思議と心地よく思えた。
あれには俺しかいない。俺だけがあれに手を差し伸べてやれる。
秘め事の共有は俺の中の何かを煽って妙な優越感を生んだ。もう周りなどどうでも良い。
狭い廊下、拳を握ったまま立ち竦む藤堂くんの隣をすり抜ける。