飼い猫と、番犬。【完結】
唇を噛み、悔しげに拳を握る藤堂くん。
俺がいない間、こいつは当然沖田の側にいたんだろう。
それが今はその場所にいるのは俺で。
同じ建物で衣食住を共にしているが故に、例え見ないようにと思ったところで実際中々そうもいかないだろうことは俺にもわかる。
元々好戦的な藤堂くんだ、あれを目にした途端積もり積もった感情が再び先走ったのも想像に容易い。
彼が抱いてきた積年の想いには同情する。
だがそれとこれとは話が別だ。
「ちゅうかまどろっこしいことしてやんともっとはっきり言うたらええねん、気に食わんのやて」
せやさかい論点も微妙にずれるしどっちも苛々すんねん。
以前にも似たようなことがあった。
想いを告げる代わりに俺に文句を言いに来て。折角発破をかけてやったというのに結局一人暴走してああなった。
迷惑千万、阿呆の極みだ。
こういう人間はさっさと腹を捌いて話させるに限る。
ふん、と仁王立ちで顎を上げれば藤堂くんの眉が分かりやすく反応する。
鋭さを増した視線がピリリと肌を刺した。
「……ああそうだよ、見る度苛々してほんっと胸糞悪い」
「おーそらすまんなぁ、せやけど自分も男やったら自分の女に自分の印つけたなんのわかるやろ?」
「わかっ…………るけど」
「ほれみぃ。まぁ文句やったらなんぼでも聞いたんで?その代わりちゃんとおんなじ数だけ沖田にふられて来いや呆け」
「なんでだよ!」