飼い猫と、番犬。【完結】

余程頭に来ているのか単純なのか、段々と声の大きくなってきた藤堂くんは豪快に突っ込みながらダンッと一回足を踏み鳴らす。


猿め。



「そらそやろ、俺にばっか気持ち伝えて満足するんか自分」

「ちょっと変な言い回しやめてよ、する訳ないだろっ」

「諦めん言うたんは自分やろ、ほなら諦めつくまでなんぼでもふられてきたらええねん」



鬱々悶々とされて噛み付かれたり突っ走られたりするくらいならその方がまだ良い。


結局のところ、叶わぬ感情であるならそれは己の手で昇華させるしか方法はないのだ。


漸く俺の言いたいことを理解したらしいそいつは、それでも不満そうに眉を寄せる。


「……随分余裕だよね」

「当たり前やろ、あれは俺のや。なぁ沖田?」

「……、え?」



やっぱし気ぃついてへんかったんか。


廊下の向こうにやった俺の視線を追うように、藤堂くんがゆっくりと後ろを振り返った。


ほんの少しの間が空いたあと。
観念したのか、庭の草木だけが見えていた空間に沖田がおずおずと顔を覗かせて。


「……すみません、声が聞こえたので」


気不味そうに目を泳がせながらぽそりと言い訳を漏らした。



「っ……総」

「しゃーないて、五月蝿いこいつが悪いねん。それよかさっきの答えは?」
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