飼い猫と、番犬。【完結】
何故引き摺り込んだと言わんばかりの顔で沖田が俺を睨み付ける。
だが当事者でもあり、藤堂くんが足を鳴らした辺りから話を聞いていたと思われるそいつは、恐らくこの状況を理解している。
それを肯定付けるようにはぁと小さく息を吐き出した沖田は、僅かに眉を下げて藤堂くんへと視線を移した。
「私は、別にあの人の所有物になった覚えはありません」
「なぁ、そこ否定する必要あんの?」
「あります。良いから貴方は少し黙っててくださいよっ」
なんじゃそら。
毛を立てた猫のようにいーと歯を見せ威嚇するから笑える。
幾許かの懐かしさを覚えるやり取りに片口を上げつつ肩を竦めて壁に凭れると、漸く沖田の冷たい目がするりと離れていって。
仕切り直しの為なのか乾いた咳を一つ溢したそいつは、今度こそ真っ直ぐに平助を見つめた。
「……ですがその、やはり平助は大切な家族で、男性としてはどうしても見れなくて……すみません」
大切な家族、それは沖田にとって最大の賛辞なのかもしれない。
だが同じ男としてあまり嬉しくはない言葉だとわかるから、苦笑してしまう。
本人は無意識なのだろうが、こういう時に実感する。
……ほんま、狡い女や。