飼い猫と、番犬。【完結】
「……そうだな、確かに俺も同じ選択をする」
その口許にうっすらと笑みが浮かぶ。
わかって……くれた?
そう安堵しかけたのも束の間。
直後呆れたように息をついた一くんは、再び口許を固く結ぶとまた、真剣な眼差しを向けてきた。
「それがお前の決断なら俺はもう何も言わない。だが何かあったらちゃんと頼ると約束しろ。味方は一人でも多い方が良いだろう?」
って、あれ?何か変だ。
よくよく考えればさっきの言葉も可笑しい。あれは気が付いたというより知っていたというのが正しい口振りだ。
これってもしかして──
「一くん、全部知って……?」
「もーバラしてしもてからにー」
「うわっ!?」
そんな疑問を問い掛ける途中、ひらりと音もなく視界の隅に降ってきた黒の塊。
一くんのすぐ後ろに降り立ったそれは、伸ばした両腕を一くんの肩にだらりと乗せて体ごとのし掛かる。
耳慣れた上方言葉を喋るそいつの名はもう言わずもがな、だ。
「黙っとけ言うたやろー」
「……俺は総司の口から聞きたかったんだ。というか重たい、退け」
「沖田が俺とばっかおるさかいちょい淋しなったんやろ」
「……五月蝿い」
なんか……仲良し?
鼠か油虫(ゴキブリ)を彷彿とさせる登場にドクドクと脈打つ胸を押さえつつも、初めて見る二人のやり取りに、さっきまでの緊張が一気にほどけた。
「……有り難うございます、二人とも」